一般社団法人 阿蘇郡市医師会 Aso Medical Association
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会長あいさつ

 この度令和4年4月1日をもって阿蘇郡市医師会第14代会長を拝命いたしました阿蘇立野病院の上村晋一です。故郷阿蘇の地で医療に従事し、早23年を迎えました。幼少の頃より「医師会」という単語は、日常的に我が家で父である順一から聞かされ、宴会や麻雀等で賑やかで楽しそうなイメージがありました。同時にタバコとアルコールの入り混じった匂いが強烈によみがえってきます。なぜ父たちがこのような一体感をもっていたのか、実に羨ましいという感情は潜在的に長らく持っていたと思います。

 少なくとも6年前の熊本地震までは平凡な一医師、一経営者として医師会活動をこなしてきましたが、被災を経験することによって私のそれまでの思想信条がやむなく変革され、人吉水害を経てさらに昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってそのことを確信するに至りました。以下はあくまで私個人の意見であります。

 何を確信したのか。それは「人間は人(ヒト)と人(ヒト)との間柄を重視する社会的動物である」ということでした。震災の時は医師会の先生方をはじめ様々な有難いご支援を頂きました。その一つひとつがこれほど精神的活力、エネルギーになるとは体験して初めて理解できました。すなわち支援、受援を通して形成される間柄によって言葉で表現できない安心感、充実感を得ることができたのです。熊本地震での受援で得た感情と人吉豪雨での支援で得たそれは、実のところ表裏一体のものではないかと思います。COVID-19の対応時にも同じような体験を支援、受援の立場で感じることができました。安心、充実の間柄を形成することこそが真の社会活動ではないでしょうか。

 マスコミを中心に、あまねく「平等」の立場や権利が主張される傾向の強い現代社会。しかし、それでは治まるものも治らず争いが起きているのが現実ではないでしょうか。お互いが異なる間柄を望ましくするためには、「礼節」が欠かせないものであり、新渡戸稲造の有名な「武士道」でも第一章「道徳体系としての武士道」でも「あたかも医者が医者仲間の競争をば職業的礼儀によって制限するがごとく」という一文があります。平等のみを主張し、礼節を欠き利に走るならば争いが起きることは論を俟ちません。現実として医師会が医師のみならず様々な個人、団体と応対するときに間柄を重視するためは、その関係性を平時から形成しておく必要があります。特に有事の際において間柄を重視した関係が、その優先順位を決める判断基準になるかと思われます。

 先人の築き上げてきた職業的集団である阿蘇郡市医師会が、その構成員である医師会員のための団体であるべき行動は何かということをこの時代に合わせて共に考え、実践していきたいと愚考しています。是非皆様のご協力をお願いするとともにどうか2年間よろしくお願い申し上げます。

阿蘇郡市医師会 会長
上村晋一